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デジタルガバナンス・コード実践の手引き2.0

DX認定の指南書ともいえる『中堅・中小企業向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き2.0』が公開されました。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/contents.html

昨年改訂された「デジタルガバナンス・コード2.0」に準拠したものになっています。改訂ポイントは3つ。

①デジタルガバナンス・コード2.0に準拠したこと

②DXの実践事例が11に増え、DX推進の4ステップとDX成功の6つのポイントが明確になったこと

③伴走型支援の事例が紹介されたこと

株式会社DX経営研究所のクライアント3者が紹介されています。

株式会社ヒサノ様、株式会社みらい蔵様、株式会社NISSYO様の事例です。


早く中身知りたいという方のために、手引書の改訂ポイントをご紹介します。

1.デジタルガバナンス・コード2.0の改訂ポイントとは?

「デジタルガバナンス・コード」は、経営者がDXによる企業価値向上の推進のために実践することが必要な事項(ビジョン・戦略等)をとりまとめた文書です。

DXが話題となり、うちもDXに取り組んでみたいという経営者も増えてきたなかで、「いったい何から手を付けていいの?」という問いに対して、「こうやって進めれば、デジタルで変革できますよ」というお手本をしめしているといってもいいと思います。

デジタルガバナンス・コード(以下、デジガバコード)の要諦が5つ書かれています。デジガバ・コードを確認ください。

1.ビジョン・ビジネスモデル

2.戦略

  2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策

  2-2.ITシステム・デジタル技術活用環境に関する方策

3.成果と重要な成果指標

4.ガバナンスシステム


2.0で改訂されたのは、DX認定の認定基準に「⼈材の育成・確保」が追加されたことです。

(2-1.組織づくり・⼈材・企業⽂化に関する⽅策)
 デジタル技術を活⽤する戦略において、特に、戦略の推進に必要な体制・組織及び⼈材の育成・確保に関する事項を⽰していること。

デジタルガバナンス・コード改訂版のポイントには、具体的にどんな人材の育成・確保が必要かが記載されています。

★ リスキリングやリカレント教育など、全社員のデジタル・リテラシー向上の施策が打たれている。その中では、全社員が⽬指すべきリテラシーレベルのスキルと、⾃社のDXを推進するための戦略を実⾏する上で必要となるスキルとがしっかりと定義され、それぞれのスキル向上に向けたアプローチが明確にされている。


★経営戦略と⼈材戦略を連動させた上で、デジタル⼈材の育成・確保に向けた取組が⾏われている。


★社員⼀⼈ひとりが、仕事のやり⽅や⾏動をどのように変えるべきかが分かるような、経営ビジョンの実現に向けたデジタル活⽤の⾏動指針を定め、公開している。

実践の手引きに掲載されている株式会社樋口製作所(岐阜県各務原市・輸送用機械具製造業)は、現場とITをつなぐブリッジエンジニアの活躍によって、社内の情報連携強化と新ビジネスの構築を実践したと紹介されています。現場には現場の思いがあり、IT部門とはややもすると対立しがちですが、この会社のデジタル人材は現場とITをつなぐ役目を果たしています。どのような工夫があったのか?等は手引きに本文に詳細に紹介されています。この事例はDXセレクション2022で表彰されています。


2.DX実践事例が増強され11に。銀行やITCによる伴走型支援事例も

DXを進める際に参考になるのは、実際に取り組まれている事例だと思います。

デジガバコード実践の手引きでは、大きく分けてデジガバコードの実践の取り組み例として3社、DX推進の実践事例として8社の11社が紹介されています。

最初のデジガバコード実践の取り組み事例は「ゑびや」「松本プレシジョン」「ヒサノ」

「株式会社ゑびや」の事例では、三重県伊勢市にある創業約150 年の老舗が「世界一 IT 化された食堂」になるまでの取り組みを紹介。伊勢神宮の門前町に位置するも、提供するメニューはフツー、グルメサイトの評価も2.86と芳しくない状態から、若社長が一念発起してデジタル化やデータ活用にとりくみ、7年後には売上5倍、利益50倍の大躍進。現在はそのノウハウを全国から海外まで提供しており、店舗改善やデータ活用・DX を積極的に取り入れた「株式会社EBILAB」を創設。当たり前をやればもうかるはずという発想から、デジタル化推進し顧客目線で他にはない価値を提供して成功し、IT企業にまで発展した。

「松本プレシジョン株式会社」は、1948 年創業、福島県喜多方市の精密機械部品メーカー。とあるセミナーに出席した社長が、「デジタル or ダイ」という言葉に衝撃を受けた。講演受講後「正しい危機感」を持ちつつ、社長が率先して DX を強く意識し、生産性を向上して賃金を上げるためには、中長期的な目線で時間と資本を投入しながら DX に取り組んだ。デジタル化は短期的なリターンを求めるのではなく、「未来への投資である」という認識のもと営業利益の15%を投資していった。定期的に参加していた会津産業ネットワークフォーラムでは、システムベンダやコンサルティング会社や会津大学といった幅広い社が連携しながら、地域の生産性向上のため中小企業向け共通業務システムプラットフォーム「CMEs(Connected Manufacturing Enterprises)」が構築さており、その導入を決断。これまでカスタマイズして利用してきたパッケージを捨て、CMEsにかけた。既製品であるCMEs導入に苦労はあったが、逆にその苦労が社内変革へのきっかけとなり、従業員が積極的にかかわることで成果があがった。経営者が外部セミナーの受講をきっかけに「正しい危機感」を認識し、強いリーダーシップのもとデジタルで社内変革を遂げた事例として参考となる。

「株式会社ヒサノ」は、熊本市と福岡に拠点を置く半導体製造装置や PCR 検査機器等様々な精密機械を輸送・搬入・設置する運送業者。2008 年に就任した現社長は、社長就任後 10 年が経った 2017 年頃から、事業を進める中で漠然と「このままではいけない」「属人化・ブラックボックス化した業務を改善しなければならない」という思いを抱くも、どこから手を付けていいかわからない。ITベンダーに相談するも専門用語は、ファックスの電子音「ピーヒャララー」としか聞こえない状態であった。地元金融機関主催のITセミナーに参加し、ITコーディネータと出会い、自社の強みは何か?お客様のために自社が取り組むべき課題は何かを対話によって可視化し、数年後のあるべき姿として経営ビジョンを文書化した。コロナ禍の中、オンライン会議で7部門の業務フローを可視化したところで、受発注に使っている「横便箋」がボトルネックであることが判明し、補助金を利用してシステム開発を行った。ヒサノの事例からは、「ゼロ→イチの一歩を踏み出すこと、長い時間をか て変革を続ていくこと」がDX推進の要諦であることがわかる。自社内にデジタル人材がいなくても、外部人材を活用して「山頂目指し、まずは一歩踏み出す」ことが重要である。

株式会社ヒサノ様は、当社DX経営研究所の中尾が支援している事例で、令和3年度ITコーディネータ表彰にて最優秀賞(経済産業省商務情報政策局長賞)を受賞されました。


3.DX推進の実践事例として8社の紹介

デジガバコード実践の手引きには、「DXの成功のポイント」が紹介されています。

(1)気づき・きっかけと経営者のリーダーシップ【意思決定】

(2)まずは身近なところから【全体構想 意識改革】

(3)外部の視点 人材の確保【DX 実現プロセ の全般】

(4)DX のプロセスを通じたビジネスモデルや組織文化の変革【DX 拡大実現】

(5)中長期的な取組の推進【DXプロセス全般】

(6)伴走支援の重要性と効果的な支援のポイ ト

<取り組み事例>

取組例A 株式会社ゑびや・株式会社EBILAB⇒

取組例B 松本プレシジョン株式会社

取組例C 株式会社ヒサノ

<DX実践事例>

事例1 株式会社山本金属製作所(大阪府大阪市)

事例2 株式会社リョーワ(福岡県北九州市)

事例3 樋口製作所(岐阜県各務原市)

事例4 西機電装株式会社(愛媛県新居浜市)

事例5 株式会社常陽銀行(茨木県水戸市)

事例6 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ(福岡県福岡市)

事例7 株式会社NISSYO(東京都羽村市)

事例8 株式会社みらい蔵(大分県豊後大野市)

出典)経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

大枠で区分すると事例1~事例4はモノづくりの現場でのビジネスモデル変革をどう進めてきたか?が、それぞれの会社のストーリーでわかりやすく書かれています。

事例5~6は、地方銀行による中小企業の支援事例であり、茨木県の常陽銀行と福岡の福岡銀行が銀行内にデジタル支援部署を立ち上げ身近な金融機関が地域企業によりそいながら、どのよう伴走型支援によってデジタル化によるビジネスの発展と成長を後押ししてきたかがわかりやすくまとめてあります。両銀行とも地銀によるDX支援のモデルとして注目が集まっています。

事例7~8は、伴走型支援者であるITコーディネータによる支援事例です。対話によって自社のパーパスを見つめなおし、数年後のビジョンを文書化し、そのビジョンを達成するための戦略構築した事例です。この事例はDX経営研究所の中尾が支援しました。


デジガバコード実践の手引きは、用途によって3つに分けてあります。

一つは、手引き(本体)です。78ページありますが、一つ一つの事例がストーリー仕立てで読みやすく記載されています。なによりデジタルガバナンス・コードと取組事例のところでは、デジタルガバナンス・コードと取組事例の関係性を明確にして引用してあるためDX認定を目指す企業にとっては参考になると思います。

二つ目は、手引き(要約版)です。11の事例がA4一枚でコンパクトに17ページにまとめられています。まずは、これを読んでから興味がある会社の取り組みを本体で読んでみるというのもいいかもしれません。要約版では、全ての事例を4つのステップ「何のために会社があるか(理念・存在意義)」⇒「5年後にどんな会社でありたいか(経営ビジョン)」⇒「理想と現状の差分は何か、どう解消するか(戦略)」⇒「顧客目線での価値創出のためデータ・技術をどう活用するか(目標・体制)」の切り口で各事例のポイントを押さえてあります。各社それぞれに理念があり、ありたい姿があり、理想と現状の差分の解消の仕方があり、どうそれを実践したのか?が一目で把握できます。社内での勉強会や経営者への説明等に使うと便利だと思います。

三つ目は、手引き(概要版)です。まさに表裏1枚の概要がギューッとつめられており、デジガバ・コード2.0を説明する際に便利なツールです。これは支援機関や行政のDX担当者が利用されることを想定されているようです。


とかく、国の資料はムズカシクて、テキストだけで、退屈で・・・となりがちですが、今回ご紹介したデジガバ・コード実践の手引きばかりは、「顧客目線での価値提供」をかなり意識された内容となっているようです。まずは、ホームページを見て、時間があるときに読んでみてください。きっと、なるほどーという気づきがあると思います。

当社では、DX認定取得講座を準備しています。このデジガバ・コードや、デジガバ・コード実践の手引きについての素朴な感想や疑問、実際に取り組んでこられた実践経営者のお話などを熱く語りたいと考えております。